日本は24%、中国は合計で54%に

トランプ大統領が示した表の一部(Truth Socialより)。左の数字が対象国の「為替操作や非関税障壁を含めた関税」、右が今回の「割引された相互関税」

 トランプ米大統領は2日、世界各国からの輸入品に対して「相互関税」をかけると発表した。年1.2兆ドル(179兆円)を超える米国の貿易赤字や国内産業の空洞化を「国家の緊急事態」と見て、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、大統領権限で関税を発動する。

 トランプ氏はホワイトハウスの庭園「ローズガーデン」で演説し「何十年もの間、米国は近くて遠い国々、敵も味方も関係なく、略奪されてきた」とした上で、「米国民の皆さん、今日は『解放の日』だ。ずっとこの日を待ち望んでいた4月2日は、米国産業が再生し、再び豊かになり始めた日として永遠に記憶されるだろう。我々の経済的な独立宣言だ。この国は、短期間でまったく別の国になるだろう」などと述べた。

 相互関税の対象となるのは約60カ国で、各国に一律10%の関税をかけたうえで、為替操作と非関税障壁含めた関税で国内産業を保護していると米国が認めた国・地域ごとに異なる税率を上乗せする。例えば日本は米国製品に対し為替操作と非関税障壁含めた関税率は46%とみなされ、それに対し米国は日本製品に半分の24%をかけるといった具合だ。一律10%の基本関税は5日に、国・地域別の上乗せ分は9日に発効する。

 これにより関税率は欧州連合(EU)が20%、インドが26%、台湾32%、韓国25%、カンボジア49%、ベトナムが46%など。英国、豪州、ニュージーランドは上乗せなしの10%になっている。日本の24%はEUより高いがアジアではもっとも小さい。トランプ氏は大半が米国に課している関税の約半分にとどまるとして「これは完全な相互関税ではなく、親切な相互関税だ」と述べた。中国は発動済みの20%に加え、34%を上乗せし、合わせて54%となり、トランプ氏が2024年大統領選で公約として掲げていた60%に近づく。

 すでに25%の追加関税を発動しているカナダ、メキシコは相互関税の対象に入っていない。現行の追加関税が終了した後には12%の相互関税に移行するが、その場合も米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たす輸入品は対象外になるとしている。

 自動車・自動車部品や鉄鋼・アルミニウムなど、分野別で追加関税を課す品目は相互関税の対象から外す。また銅、医薬品、半導体、木材、金、エネルギー、米国で入手できない特定の鉱物など一部品目には適用されない。

 相互関税は米国に生産を呼び込み、貿易赤字を解消する狙いだが、世界経済へ深刻な打撃を与え、「貿易戦争」の激化で米国自身にもインフレなど悪影響が及ぶとの指摘も多い。

 トランプ氏の会見後、米株式先物は急落した。ナスダック先物は4%下落。米国の時間外取引で、中国でiPhoneを製造するアップルの株価は約7%も下がるなど、マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7銘柄の時価総額は約7600億ドル(約112兆円)消失した。株安は3日、アジア市場へ波及。香港で1.72%、韓国で1.27%、オーストラリアでも1.2%値下がりした。日本では日経平均株価が一時1600円以上急落して動揺が広がった。ただし終値では下げ幅が900円台まで縮小した。景気の先行きへの懸念が強まり、ドルを売って円を買う動きが出て、円相場は1ドル=147円台後半まで値上がりした。