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144 永住権審査待ち時間

 米国永住権(通称グリーンカード)の申請過程が大幅に遅れています。さらに、Priority Date (PD) の後退により、永住権申請の順番が回ってくる前に滞在資格が失効してしまい、いったん国外に出る必要がでてくるなど、新たな問題が浮上しています。Priority Date  (PD)とは、Labor Certificationの提出日、Labor Certification免除の場合はI- 140の提出日を指します。国別に年間枠が設定されているため、国によってPDの順番待ち時間が異なります。

   【Labor Certification】

 雇用主スポンサー申請の中でも、労働局の審査を経る必要のある第2申請枠と第3申請枠は2023年6月に新しいシステムを導入してから審査時間が大幅に遅れており、全体の時間(平均賃金、求人広告、LC審査)が以前の倍の26+カ月くらいかかっています。また、新システムの質問内容が変わったことにより、様々無問題が発生しているようです。

   【雇用主スポンサー申請】  

 Labor Certification承認後は雇用主による移民スポンサー申請を移民局に提出します。この審査時間は現時点でおよそ5・5+カ月ほどかかっています。特急サービスを利用すれば3週間以内の審査となります。第1優先枠の国際役員・管理職枠や第2優先枠の国益免除 (NIW) は普通申請だとおよそ21〜22+カ月ほどかかっています。これらの枠の特急サービスは45日以内の審査となります。

  【永住権申請】

 雇用主スポンサー申請承認後は、永住権申請までに待ち時間がないかPDを確認します。今年1月時点の国務省のVisa BulletinのFinal Action Dateによると、日本出生者の場合は第1優先枠は待ち時間はなし、第2優先枠はPDが2024年4月1日、第3優先枠はPDが2023年4月22日より前の人の申請書類の審査をしています。1月時点ではFiling dateチャートに基づき早めに申請書類を受理しているので、第2優先枠はPDが24年10月15日、第3優先枠はPDが23年7月1日より前の人の申請を受け付けています。I‒94の滞在期限が失効する前に自分のPDが回ってきたら、アメリカ国内で永住権の申請書類 (I‒485)を提出することができます。申請中はアメリカ国内に滞在して審査を待つことができます。前トランプ政権時に永住権申請者は皆面接が義務つけられました。申請場所によって面接時間の待ち時間にかなりの差がありますが、グリーンカードが発行されるまで、現時点で平均11カ月から30+カ月ほどかかっています。

 米国内での永住権申請時に就労許可書と旅行許可書も一緒に申請できるので、申請中にI‒94が失効したら、就労許可が来るのを待って就労を再開することができます。また、H‒1BとLビザ以外の人は、旅行許書が届いたら国外にでることもできます。入国時は旅行許可書をみせて入国することになるので、滞在資格はParoleeに変わります。入国後は短期就労ビザではなく、就労カードを使った就労に変わります。人事には就労カードと新しいI‒94をみせて、就労資格と滞在資格が変更したことを連絡します。

   【滞在資格の失効】

 H‒1BとLビザは移民する意思を示してよいビザなので、永住権申請中の延長申請や出入国が可能です。H‒1B保持者の場合は6年満期がきても、Labor Certificationを申請して1年が経過していれば、H‒1Bを6年目以降も延長することができます。Labor Certification を申請して1年が経過している場合、あるいはI‒140雇用主スポンサー申請が承認されかつ国別の待ち時間があるためにI‒485を申請できない場合は、 H‒1Bを6年目以降も申請することができます。その他、移民する意思を示してはいけないビザ種類の保持者は自分のPDの順番が回ってくるまでに滞在期間(I‒94)が失効した場合、アメリカ国内での永住権の申請 (I‒485)はできなくなります。その場合はいったん国外にでて、自分の出身国、あるいはいは居住国の米国大使館か米国領事館での移民ビザ申請に切り替える必要があります。

 永住権申請中、滞在期間の上限を超えて滞在資格を延長できるのはH‒1Bだけなので、H‒1Bに変更できるオプションのある人は早めにH‒1Bに切り替えたほうがよいでしょう。ただ、H‒1Bは年間の抽選に当選した者のみ申請できるので、当選する保証はありません。また、H‒1BとLビザの滞在期間は一緒に換算されるので、Lビザをすでに6年間使った人はH‒1Bを申請することはできません。

  【滞在資格失効後の就労方法】

 ここ数年は永住権の年間発行枠が早めになくなっているために、I‒485の申請までに数年の待ち時間がでています。そのために、PDの順番が回ってくる前に就労滞在資格(I‒94)が失効してしまう場合があります。

・ H‒1B、Lの再申請   

 H‒1BやLビザ滞在資格が失効し、アメリカ国内でさらに延長できない場合は、いったん国外にでて国外の関連企業で最低一年間就職し、1年後に再度H‒1BやLビザを申請してアメリカに再入国することができます。なお、H‒1Bは3月の抽選に当選しなければ申請できません。

・Compelling Circumstance EAD

 それ例外には、 H‒1B、H-IBI、L-1、O-1、E-3ビザ保持者とその配偶者は、I‒94 の失効前にI‒140承認を元にCompelling Circumstance(差迫った事情)という理由で 就労許可書を申請するオプションがあります。

 就労許可書が発行されれば、I‒94 失効後も米国で引き続き就労することができます。ただし、滞在資格が失効した場合は、米国内で永住権(I‒485)を申請することはできないので、日本の米国大使館または米国領事館で永住ビザを申請する方法に変わります。

 その場合、国外の米国領事館での移民ビザ申請に切り替える申請を移民局に提出します。それが承認されたら、必要書類をオンラインシステムにアップロードします。日本での面接日が決まったら自国に戻って、身体検査をうけ、面接に赴きます。なお、この種類の就労許可書が継続されるかは不明なので、必ず最新の情報を確認したほうがよいでしょう。

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 大蔵昌枝弁護士プロフィール


 ジョージア州弁護士。アトランタにあるTaylor Duma LLP 法律事務所勤務。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本にて証券会社や製造会社の国際事業部をの勤務を経て、97年に米国公認会計士試験に合格。2002年サウス・カロライナ州サウス・カロライナ大学ロースクールおよびビジネススクールを卒業。経営学修士号(MBA)、法学博士号(JD)を取得。現在は弁護士として移民法やその他の相談などを行っており、日本語、英語、中国語で対応できる。