
「帰国生入試は特別だから。」
そう言われることがあります。確かに、一般入試とは時期も内容も異なり、英語資格や海外経験が重視される学校も多い。しかし実際のところ、「特別」であるがゆえに、情報を持つかどうかが大きな差を生みます。
申し遅れましたが、私は川村宏一と申します。早稲田アカデミーという進学塾に勤め、現在はニューヨーク校で現地代表を務めています。マンハッタンから少し離れた静かな住宅街に校舎があり、対面だけでなくオンラインで学ぶ生徒も多く在籍しています。ここNY校では、日々多くの帰国生と向き合う中で痛感するのは、「正確な情報を、タイムリーに入手することの重要性」です。この紙面では、そうした帰国生入試の最新情報や考え方を、現場の視点からお伝えしていきたいと思います。
ここ数年、帰国生入試の形は大きく変化しています。出願のオンライン化、英語資格の扱い、面接や作文の形式など、学校ごとの特徴がますます多様になりました。たとえば同じ「英検準1級」でも、ある学校では得点換算され、別の学校では出願条件としてのみ認められます。また、かつては海外会場でしか受けられなかった試験が、いまではオンラインで受験できるケースも増えています。つまり、最新情報を知っているかどうかで、受験の選択肢は大きく変わるのです。
帰国生入試の難しさは、情報が一か所にまとまっていないことにもあります。学校の公式サイト、説明会資料、願書要項、そして実際に受験したご家庭の体験談——それぞれが貴重な情報源ですが、整理し、比較し、自分たちの状況に当てはめる力が求められます。「誰かがまとめてくれるのを待つ」だけでは、正確な判断ができません。特に海外在住のご家庭では、時差や距離の制約で、情報を得るタイミングが遅れがちです。しかし、この"情報の遅れ"こそが、最大のハンデになり得るのです。
反対に、積極的に情報を集め、分析し、早めに動いたご家庭ほど、受験を有利に進めています。どの学校がどんな入試タイプを実施し、自分の子どもの強みをどこで発揮できるか——たとえば「英語型」か「国算型」か、「独自問題型」かを理解するだけで、準備の方向が明確になります。情報はただのデータではなく、戦略を立てるための武器なのです。
帰国生入試は、日本にいない子どもたちが受ける試験です。だからこそ、情報をどれだけ持っているかでスタートラインが変わります。学校の方針や試験形式は毎年少しずつ変化し、去年の体験談がそのまま今年に当てはまるとは限りません。常に「今」の情報を追い、どう生かすかを考える姿勢が、保護者にも子どもにも求められます。これこそが、帰国生受験を乗り越えるための本当の"受験力"です。
もちろん、情報だけで合格が決まるわけではありません。努力、学力、そして精神的な強さも欠かせません。しかし、同じ努力をするなら、より確かな方向を見て進む方が成果は出やすい。正しい情報を早くつかみ、行動に移せる家庭こそ、帰国生受験を制するのです。
このエッセイシリーズでは、今後6回にわたり、「情報」と「戦略」の視点から、帰国生入試を成功に導くための具体的なヒントをお届けしていきます。第1回の今回は、その土台となる「情報の重要性」についてお伝えしました。次回は、実際にどのように情報を集め、整理し、比較していくか——"情報戦の第一歩"を一緒に考えていきましょう。

■川村宏一(かわむら・こういち)
早稲田アカデミーUSA取締役・NY校現地代表。2022年に早稲田アカデミーに入社後、校舎で7年間にわたり講師を務め、その後、高校受験部門にて英語科目の責任者を担当。現在の早稲アカ英語科システムの礎を築いた後、国際部に異動し、英語専門校舎の統括責任者に就任。2023年3月より現職。早稲田アカデミーの教育理念である「本気でやる子を育てる」を、海外においても実践している。問い合わせはEメール[email protected]まで。
早稲田アカデミー ニューヨーク校 https://www.waseda-ac.co.jp/abroad/school/newyork.html




