
今、日本を含め、様々な国の人が、米国の関税の行く末を固唾を呑んで見守っています。国同士の話し合いほど規模やリスクが大きくなかったとしても、いつの時代も私たちは、多岐にわたる内容をめぐって、お互いに交渉を続けてきました。そこで今回は、どのように妥協してもよい点については相手に合わせ、譲れない点はしっかり守っていくかについて取り上げます。
ビジネスで妥協しやすい点の一つは、値段や個数かもしれません。新規のお客様から値下げをお願いされたら、While we are unable to lower our costs permanently, we are happy to offer a one-time 50% discount on our annual fee. などと申し出ることができます。常日頃お世話になっている顧客なら、To thank you for your patronage, we will include three free samples of our latest product in every shipment. などと言えます。
プライベートでも妥協することは多いでしょう。ルームメイトと家事を分担するときは、How about we take turns cooking dinner from Monday through Thursday, and dine on our own on other days? などと提案することができます。同居を始めたばかりのカップルなど、ある程度親しければ、How about I pay a higher portion of the rent while you look for a job? We can discuss again how we split it once you find a full-time position. などと申し出ることもできます。
他方、譲れない点はしっかりと守らなければなりません。何がネックかを明確にすれば、状況も改善されやすいでしょう。組織としては、As a cleaning service, we must protect our employees’safety. Unless these wobbly stairs are fixed, I’m afraid we’re unable to come work for you. などと主張できます。また、たとえば保護者としては、Our child’s wellbeing is most important to us. If you cannot clearly explain your lunch options for food allergies, we must choose another school. などと強く言うこともできます。
異なる要望を組み合わせることも可能です。対面で参加したい人としたくない人、参加費を払える人と払えない人がいるイベントの場合、To accommodate all members, this seminar is presented in a hybrid format: online attendees are welcome to attend for free, while in-person attendees are requested to pay $50 for the post-seminar networking lunch in DC. などと言えます。
自分一人の交渉でさえ難しいことが多い中、政府のように大人数を代表する場合は、国内の多方面から異なる意見が上がり、想像しがたいほどの圧力がかかっていることと思います。関税についても、少しでも多くの人が満足できる形で解決に向かうことを願うばかりです。

■プロフィール
シアトルで生まれ、ホノルルと東京で育つ。Shiori Communications, LLCの代表として、ワシントンDCを中心に、通訳、執筆活動などを展開。日米をつなぐ言葉の仕事に情熱を注いできた。過去には米日カウンシルや在米・在英日本大使館の広報チームで勤務。通訳者としては、日米各地でハイレベルの会議、人的交流プログラムなどを担当。ダートマス大学で学士号、コロンビア大学の国際公共政策大学院とジャーナリズム大学院で修士号を取得。ブログ「tabula sarasara」、ポッドキャスト「CrossWorld Puzzles」更新中。