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134   H-1B以外の選択肢

 2026年度の新規のH-1Bビザ申請の受付が3月24日正午に終了しました。3月末の抽選に当選した人は4月から6月の間にH-1Bを申請できます。もし、6月末までに年間枠が償却されなければ、7月に第2抽選で残枠分の申請者が選ばれます。今年のH-1B抽選に当選しなかった人は下記の選択肢を検討できます。

【H-1B枠免除枠】

 大学機関、非営利の大学と連携プログラムがある機関(例:大学から研修生を受けいれている病院など)、もしくは政府や民間の非営利のリサーチ団体などH-1B枠免除の非営利団体が雇用主としてH-1Bを申請することができます。これが承認されれば、本来ならばH-1B枠を必要とする雇用主が第2雇用主としてH-1Bを申請することができます。枠免除の雇用主のもとで就労が続く限り、第2雇用主の下で仕事を続けることができます。枠免除団体の就労を辞めて、第2雇用主の元だけで働くためには、第2雇用主が翌年の年度枠で新たにH-1Bを申請しなければなりません。H-1Bはフルタイムでもパートタイムでも申請できます。

【STEM/OPT延長】    

 F1学生の場合、OPT就労許可書を12カ月間まで申請できますが、STEM学位の学生はOPTをさらに2年延長することができます。このSTEM-OPT申請は、雇用主がE Verifyに加入することが条件で、雇用主は研修目的を明確にした研修計画書を提出する必要があります。STEM学生はOPTを合計36カ月申請できるので、この間最多3回までH-1Bを申請することができます。ただし、追加24カ月のSTEM-OPT期間は60日以上非雇用状態が続くとOPTが失効するので注意が必要です。

【F1プログラム延長】

 OPTやSTEM-OPTの残り期間が少ない場合、大学の他のプログラムに入学してF1学生滞在資格を延長することもできます。OPTは学位毎に申請できるので、別の学位プログラムに入学すれば再度OPTを申請することができます。また学位プログラムの一環として企業研修がある場合、あるいは大学の所属学位部門が大学外での雇用が学業に有益であると認めた場合は、学校がCPT(Curriculum Practical Training)による就労を認めてくれる場合もあります。ただし、CPTを12カ月間フルに使った場合はOPTが申請できなくなるので注意が必要です。

【研修ビザ】

▽ J1企業研修(経験有)

 米国外の大卒でかつ米国外で1年間の関連経験があれば、J1企業研修ビザを申請することもできます。米国外の大卒でなければ、米国外で5年間の関連職務経験が必要となります。研修期間は一般に18カ月まで、ホテル、旅行などのホスピタリティー関連事業の場合は12カ月までとなります。

▽ H3企業研修(経験無)

 アメリカでの研修に関連する学歴や職歴がない場合は、 H3研修ビザを検討することもできるでしょう。ただし、 H3はJ1とは異なり、教室内での研修が主体となるため、実地研修は最小限にとどめなければなりません。研修期間は最長で2年間ですが、2年間全部使った場合、国外に6カ月出ていなければその後にH-1BやLビザを申請することはできません。年間50人の申請者に発行される障害児特殊教育プログラムに参加する場合は18カ月までの研修となります。

 ▽ J1インターン

 アメリカ国外の大学に在籍して1年が経過している、あるいはアメリカ国外の大学卒業後一年以内であれば、アメリカ企業でJ1インターンビザを12カ月間まで申請することができます。

【L関連企業間転勤ビザ】 

 OPTの期間終了後に米国外の関連会社で最低1年間専門経験を積み、1年後にLビザを申請するオプションもあります。なお、国外の雇用主とアメリカの雇用主は親子会社、同じ株主の関連会社など、Lビザの関連企業の条件を満たす必要があります。

【E条約ビザ】

 日本人の場合、管理職経験或は専門的職務経験があれば、Eビザ条件を満たす日系企業がスポンサーとなりEビザを申請するオプションがあります。職務経験のない新卒者であれば、OPTとSTEM-OPTの合計3年間に専門的経験を積み、それをもとにEビザを申請することも検討できます。

【日本人以外】

 日本人以外の場合は、カナダ・メキシコ人であればTNビザ、オーストラリア人であればE3ビザの申請も検討できます。また、チリ・シンガポール人にはH-1B普通申請の6・5万枠の中から6800枠が別枠として設けられているので、これらの国籍保持者であれば、この枠がなくなるまでH-1Bの申請も可能です。

【B2観光滞在資格】

 OPT終了後帰国する場合で、アメリカでの滞在期間を数カ月間だけ延ばしたい場合は、学生滞在資格が失効する前に、滞在資格をB2観光カテゴリーに変更する申請を移民局に提出することができます。申請中はアメリカに滞在しながら審査を待つことができます。

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 大蔵昌枝弁護士プロフィール

 ジョージア州弁護士。アトランタにあるTaylor English Duma LLP 法律事務所勤務。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本にて証券会社や製造会社の国際事業部をの勤務を経て、97年に米国公認会計士試験に合格。2002年サウス・カロライナ州サウス・カロライナ大学ロースクールおよびビジネススクールを卒業。経営学修士号(MBA)、法学博士号(JD)を取得。現在は弁護士として移民法やその他の相談などを行っており、日本語、英語、中国語で対応できる。