ポトマック川に墜落、67人全員絶望
トランプ氏、DEI政策が影響と持論

 ワシントンDC近郊のレーガン・ナショナル空港近くで29日午後9時ごろ、アメリカン航空の旅客機と米陸軍のヘリコプターが空中衝突、炎上しポトマック川に墜落した。旅客機は乗客60人と乗員4人、軍用ヘリには3人が乗っていた。犠牲者の回収作業を行なっている地元消防当局は30日、「生存者は見込めない」と述べ、全員死亡したとの見方を示した。犠牲者に邦人が含まれているとの情報は30日時点では確認されていない。

 旅客機はカンザス州ウィチタ発のアメリカン航空の子会社PSA航空が運航するボンバルディアCRJ700で、レーガン空港の滑走路に進入中だった。ヘリはバージニア州の軍施設フォート・ベルボア所属の陸軍の主力輸送のシコルスキーUH60(ブラックホーク)で、訓練飛行中だった。

 トランプ大統領は30日に会見を開き、「残念ながら生存者はいない。米国の歴史にとって暗く耐えがたい夜になった」と述べて、犠牲者に哀悼の意を示した。今後の調査待ちだが、「ヘリは明らかに誤った時間に誤った場所にいた」と軍のヘリ側に問題があったようだとの認識を示した。

 その後、管制官について「最高レベルの適性と知性を持ち、精神的に優れた人材でなければならない」とした上で、「米連邦航空局(FAA)の(職員採用における)多様性推進では、重度の知的障害や精神疾患を抱える人々に重点を置く内容が含まれている」と述べた。バイデン政権が進めたDEI(多様性、公平性、包括性)プログラムを批判する内容で、記者からの「多様性を重視する採用が今回の事故につながったというのか」とに「私には常識があるが、残念ながら多くの人はそうではない。我々は優秀な人材にこれをやってもらいたい」と答えた。また、「今回の事故に人種や性別が関係しているということか」の質問には「わからないが、無能さが関係したかもしれない」と応じた。

 トランプ大統領はまた、バイデン前政権で運輸長官を務めたピート・ブティジェッジ氏を名指しで批判、運輸省を「地に落とした」と述べた。した。同性愛者であることを公言しているブティジェッジ氏は、「卑劣だ。家族たちが悲しみに暮れているなか、トランプ大統領は嘘をつくのではなく指導力を発揮すべきだ」とSNS投稿、「我々は安全を第一に考え、民間機墜落の死者をゼロに抑えてきた」と反論した。

 ニューヨーク・タイムズ(電子版)は30日、2人の管制官が担当する業務に1人で当たっていたと報じた。航空管制官は不足しており、FAAの管制施設は人員不足が常態化している。ただし連邦航空局の規定では1人で行っても問題はないという。

 飛行機にはフィギュアスケートの関係者14人が搭乗していた。米国フィギュアスケート協会によると、選手、コーチ、家族たちがウィチタでの全米フィギュアスケート選手権大会後に催された強化合宿から拠点のボストンに戻るところだった。94年世界選手権でペアで優勝したエフゲニヤ・シシコワとヴァディム・ナウモフ夫妻、その教え子であるスペンサー・レーン選手(16)とその母クリスティンさん、同じく教え子の韓国系女子フィギュアスケート選手、ジナ·ハンさん(13)とその母親ジンさんらが犠牲となった。

 墜落現場はホワイトハウスから南に約5キロほどで、首都圏での大惨事となった。テロの可能性はいまのところどの機関からもあがっていない。