Home コラム 10   感謝の言葉に対する回答の仕方

10   感謝の言葉に対する回答の仕方

 11月の米国はサンクスギビングの時期。近年、社会的には先住民をめぐる歴史を見つめなおす機会にもなりつつありますが、家族や友人など、親しい間柄においては、今も七面鳥やパンプキンパイを囲んで団欒を楽しむ機会となっています。おいしい食べ物や温かい家族などへの感謝の気持ちを思い起こすこの時期は、お互いに「ありがとう」と伝える機会が増えます。そこで今回は、感謝の言葉に対し、どのように丁寧に回答するかを取り上げます。

 まず、「確かに相手の役に立てた」と謝意を素直に受け止める場合。誰もが最初に学ぶYou’re welcome. は、どちらかというと目上の人が若い人や部下などに使う言葉で、友人同士ではそこまで言いません。It’s my pleasure. はお客様や取引先にも言える、若干堅苦しい表現です。少し崩したI’m glad to be of help. は同僚にも使えます。ちょっとしたことで友人に感謝されたら、Of course! と軽く返せます。逆に、具合の悪い友人を看病したりして、深く感謝された場合には、I know you would do the same for me. と言うと、真摯な気持ちが伝わるでしょう。感謝の言葉そのものに回答せず、Those are my favorite chocolates, and I’m glad you enjoy them too. など、お礼の中身に触れるだけに留めておくのも、相手の気持ちを受け止めたことを示す方法の一つです。 

 感謝の言葉に対し、「大したことはしていない」と軽く打ち消す方法もあります。その最たる例がNo problem! で、友人から同僚、入り口でドアを押さえて感謝された通行人にまで使えます。上司やお客様に対しては、少し丁寧にNot at all. などと言えます。友人に何か買ってきたりして、長めのお礼を言われた場合には、It only took me a minute. や I was going to the store anyway. と大して手間がかからなかったことを具体的に示せます。落とし物を届けるといった小さな行為が、探していた人などに深く感謝された場合には、I only did what anyone would. といった言い方ができます。自分以上にお礼を言われるべき相手がいる場合には、Don’t thank me; she planned the whole party and I just brought you. などと他の人への挨拶を促すことができます。

 お礼の言葉にお礼で返すこともあります。友人同士ではThank YOU. と強調するだけで伝わりますが、公式な場では、I should be the one thanking you; I appreciate the opportunity to serve as a panelist. などと丁寧に言うこともできます。

 感謝の言葉の裏には、「私のためにここまでしていただいたなんて」と恐縮したり申し訳なく思ったりしている気持ちが隠れている場合があります。自然な形で回答して安心してもらうことができれば、そのような人との関係はさらに深まるのではないかと思います。

 ■プロフィール

 シアトルで生まれ、ホノルルと東京で育つ。Shiori Communications, LLCの代表として、ワシントンDCを中心に、通訳、執筆活動などを展開。日米をつなぐ言葉の仕事に情熱を注いできた。過去には米日カウンシルや在米・在英日本大使館の広報チームで勤務。通訳者としては、日米各地でハイレベルの会議、人的交流プログラムなどを担当。ダートマス大学で学士号、コロンビア大学の国際公共政策大学院とジャーナリズム大学院で修士号を取得。ブログ「tabula sarasara」、ポッドキャスト「CrossWorld Puzzles」更新中。